精神科医監修|市販の睡眠薬は効くのか?
市販の睡眠薬は効くのか、おすすめや副作用を解説
みなさん,日頃の睡眠はいかがでしょうか。
不眠症は国民病(!)と言われるほど一般的な病気として知られており,一般成人の30~40%は何らかの不眠症状を有しています。この記事をお読みの方には寝つきが悪い,途中で目が覚める,眠りが取れた感じがしないなど,睡眠でお困りの方もいらっしゃることでしょう。
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眠れなくて困った!だけど病院に行く時間がない!というケースは多々あります。医療機関への通院に抵抗感がある方もいらっしゃることでしょう。近年はオンライン診療という選択肢もありますが,そのほとんどが自由診療であり決して安くはありません。
そんな時に選択肢として出てくるものが,ドラッグストアや薬局で買える「市販の睡眠薬(睡眠改善薬)」です。この記事では市販の睡眠薬は効くのか?副作用は?おすすめはある?など睡眠改善薬にかかわる疑問についてお伝えします。
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市販の睡眠薬は効くのか?
結論,市販の睡眠薬は処方薬に比べると効果は薄いです。なぜなら,市販の睡眠薬は睡眠へ直接作用するものではないからです。
えっ?睡眠の薬なのに?と思われた方もいるでしょう。実は市販の睡眠薬と処方薬では薬の効く経路(作用機序)が全く異なっています。
これは用いられている成分の違いによるものです。市販の睡眠薬によく用いられているものが「ジフェンヒドラミン酸塩酸」という成分になります。
「ジフェンヒドラミン酸塩酸」とは?
「ジフェンヒドラミン酸塩酸」はヒスタミンの働きを阻害する成分です。ヒスタミンと聞いてピンときた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
市販の風邪薬や鼻炎薬として知られる「抗ヒスタミン薬」のヒスタミンです。ヒスタミンは,くしゃみ・鼻水等のアレルギー反応を引き起こす物質ですが,抗ヒスタミン薬を用いることでヒスタミンの働きを抑え,アレルギー反応を生じにくくさせているわけです。
風邪薬や花粉症の薬を飲んだときに眠気や集中力低下を感じたことはありませんか。実は,ジフェンヒドラミン酸塩酸にはアレルギー反応を抑える過程で,中枢神経の働きを抑制し眠気を引き起こす働きがあるのです。
この働きを睡眠改善に転用したのが,市販の睡眠薬です。つまるところ,「ジフェンヒドラミン酸塩酸による副作用」を利用して眠りを促すわけです。そのため,睡眠そのものに直接作用しないことから,市販の睡眠薬は不眠症を対象としていません。あくまで,一次的な軽い不眠を対象としています。
「不眠症の診断を受けた方は飲まないでください」という記載がある商品もあります。
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市販の睡眠薬でおすすめのものはある?
市販の睡眠薬は多くの商品が販売されていますが,そのほとんどがジフェンヒドラミン塩酸塩50mgです。同じ成分・容量であるため効果に変わりはありません。金額や剤型で選びましょう。
【成分・配合量(1日)】ジフェンヒドラミン塩酸塩50mg
商品名 | 1箱 | 希望小売価格 | 1日あたり |
ドリエル® | 12錠 | 2,090円 | 348.5円 |
ドリエルEX® | 6カプセル | 2,420円 | 403.3円 |
リポスミン | 12錠 | 2,090円 | 348.3円 |
ネオデイ® | 12錠 | 1,760円 | 293.3円 |
スリーピン® | 6カプセル | 2,420円 | 403.3円 |
ハイヤスミンA® | 10錠 | 1,320円 | 264円 |
スリーペイド | 10錠 | 1,760円 | 352円 |
アンミナイト | 30mL | 398円 | 398円 |
ナイフル® | 10錠 | 1,028円 | 205.6円 |
ドリーミオ® | 6錠 | 968円 | 322.6円 |
カローミン | 10錠 | 1,078円 | 215.6円 |
ナイトロン | 10錠 | 1,155円 | 231円 |
ナイトテクト® | 12錠 | 2,090円 | 348.3円 |
フストールS® | 12カプセル | オープンプライス | ー |
ノイロンムーンS® | 12カプセル | 990円 | 165円 |
ヨネール | 12錠 | 1,650円 | 275円 |
医療機関で処方される睡眠薬は?
一方,医療機関でよく処方される睡眠導入剤は大別して下記2タイプに分けることができます。
- 脳そのものに作用し睡眠を働きかけるもの(ベンゾジアゼピン系睡眠薬や非ベンゾジアゼピン系睡眠薬)
- 睡眠・覚醒に関わるホルモンに作用し睡眠を促すもの(オレキシン受容体拮抗薬やメラトニン受容体作動薬)
眠りの落ち方にも下記の違いがあります。
- ベンゾジアゼピン系睡眠薬や非ベンゾジアゼピン系睡眠薬は「疲れ切って寝落ち」するような感じ
- オレキシン受容体拮抗薬やメラトニン受容体作動薬は「日常生活に近い,本来の眠気を促す」感じ
またこれらの睡眠導入剤は作用時間の違いから4タイプに分類されます。
- 超短時間型(半減期2~4時間)
- 短時間型(半減期6~10時間)
- 中時間型(半減期12~24時間)
- 長時間型(半減期24時間~)
※半減期とは…服薬してから薬成分の血中濃度が半分になるまでの時間です。
【参考】精神科医監修【抗不安薬(安定剤)とは】作用・副作用・依存性
不眠と一口に言っても,寝つきが悪い,途中で起きてしまう,朝方に起きてしまう,眠りが浅いなど,その症状にはさまざまなバリエーションがあります。各症状にピンポイントで対応できるように,薬の作用時間にも違いがあるのです。
睡眠導入剤は医師の管理のもと処方されるものです。診察においてはお困りの不眠症状に合わせて処方薬がチョイスされます。もちろん,市販の睡眠薬は不眠症を対象としていない一方で,睡眠導入剤は不眠症に対する適応があります。
ちなみに,処方薬の値段(薬価)は種類にもよりますが,1錠あたり6円~130円ほどです(2023年9月現在)。ここからお使いの保険証などで自己負担していただくので,1日あたり100円を切ります。
市販の睡眠薬の副作用は?
市販薬だからと言って副作用がないわけではありません。ジフェンヒドラミン酸塩酸には下記のような副作用が認められています。
皮膚:発疹・発赤,かゆみ
消化器:胃痛,吐き気・嘔吐,食欲不振
精神神経系:めまい,頭痛・頭重感,日中の眠気,精神過敏,注意力・集中力の低下
循環器:動機
泌尿器:排尿困難
その他:倦怠感
市販の睡眠薬の注意点は?
15歳未満は使用できません。また,高齢者や妊婦の方も使用できません。緑内障・前立腺肥大・高血圧・心疾患の方は症状悪化の恐れがあります。
市販の風邪薬や鼻炎薬などにもジフェンヒドラミンが含まれています。これらの薬を服用している場合は、重複して使用しないよう注意してください。
そのほか,現在お薬を処方してもらっている方は自己判断で使用せず,かかりつけ医などに相談してください。もちろん,お酒と一緒に飲んではいけません。
「ジフェンヒドラミン塩酸塩」は2~3日ほど連用すると効き目が無くなってしまいます。
2~3日服用してみても症状が改善しない場合は医療機関へ受診ください。
【監修】
本山真(精神科医師/精神保健指定医)
医療法人ラック理事長
株式会社サポートメンタルヘルス取締役社長