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精神科医監修|神経伝達物質をわかりやすく解説

私たちが毎日元気に楽しく活動するために,脳の働きはとても休養です。脳の中は,神経細胞という細胞が無数につながっており,それらの働きによって,考えたり感じたり体を動かしたりすることができます。

神経細胞同士は,直接的・物理的につながっているわけではありません。代わりに,細胞同士はシナプスという場所で神経伝達物質というものを使い,情報を伝えています。

【監修】本山真(精神保健指定医/医療法人ラック理事長)

株式会社サポートメンタルヘルス代表

シナプスと神経伝達物質


シナプスは,神経細胞同士が情報をやり取りするための接点のようなものです。シナプスには,シナプス間隙と呼ばれる微小な隙間があり,神経細胞の終点と次の神経細胞の始点の間に広がっています。神経伝達物質はメッセンジャーのような役割を持っており,このシナプス間隙を渡って次の神経細胞に情報を伝達しています。

受容体と再取り込み


神経伝達物質がシナプス間隙を渡るためには,その受け取り手である受容体が重要な役割を果たします。受容体は渡る先の神経細胞の表面にあり,神経伝達物質と結合することで信号を受け取ります。この結合によって次の神経細胞に情報が伝達されます。

また,神経伝達物質の働きが終わった後は,再取り込みという処理が行われます。再取り込みでは,神経伝達物質がシナプス間隙から神経細胞内に戻され,再利用や分解が行われます。これによって,シナプスがリセットされ,次の情報伝達に備えることができます。

このように神経細胞が働くことで,情報が処理され,神経系の正常な機能が保たれています。神経細胞同士がシナプスを通じて情報をやり取りすることで,私たちは日々の生活を過ごすことが出来るのです。

神経細胞や神経伝達物質の働きは,私たちの気持ちや感情,行動を制御するための重要な役割を果たしています。

例えば,楽しいことをしたり,食事をしたりすると,特定の神経伝達物質が出てきて,嬉しい気持ちになったり,満足感を感じることがあります。

逆に,神経伝達物質のバランスが崩れると,悲しい気持ちや不安な気持ちが続いたり,集中力が欠けたりしてしまいます。

つまり,私たちが元気で健康に過ごすためには,神経系で神経伝達物質や受容体がうまく働いていることがとても重要となってきます。

精神科における薬物療法では,神経伝達物質のバランスを調整するために向精神薬を用いています。向精神薬が神経伝達物質のバランスを整え,元気に過ごす手助けを担うのです。

では具体的にどういった神経伝達物質に向精神薬は作用するのでしょうか。

ここでは精神科領域での主だった神経伝達物質について解説していきます。

セロトニン


セロトニンは気分や情緒の調節に関係しており,後述するノルアドレナリンやドーパミンの調整役として知られています。

セロトニンが低下すると,これら2つのコントロールが不安定になりバランスが崩れ,攻撃性が高まったり,不安やうつ,パニック障害などの精神症状を引き起こすといわれています。睡眠ホルモンであるメラトニンの原料でもあります。

◎関連する向精神薬

SSRI(エスシタロプラム,セルトラリン,パロキセチン,フルボキサミン)

SNRI(ベンラファキシン,デュロキセチン,ミルナシプラン)

NaSSA(ミルタザピン)

三環系抗うつ薬(アモキサピン,アミトリプチリン,イミプラミン,クロミプラミンなど)

その他の抗うつ薬(トラゾドン,ボルチオキセチン)

SDA(リスペリドン,ロナセン,ルーラン,ラツーダなど)

MARTA(クエチアピン,オランザピン,シクレスト)

SDAM(ブレクスピプラゾール)

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ノルアドレナリン


意欲,集中力,記憶力,恐怖,怒りなどに関係している神経伝達物質です。またストレスを感じた時にも分泌され,脳や体をストレスに対処できる状態へ切り替えてくれます。過剰になると緊張,イライラ,焦り,不眠を引き起こし,不足すると集中力ややる気の低下,無気力などの症状が出現します。不安障害,パニック障害,うつ症状,ADHDなどに関連があると言われています。

◎関連する向精神薬

SNRI(ベンラファキシン,デュロキセチン,ミルナシプラン)

NaSSA(ミルタザピン)

三環系抗うつ薬(アモキサピン,アミトリプチリン,イミプラミン,クロミプラミンなど)

四環系抗うつ薬(マプロチリン,セチプチリン,ミアンセリン)

ADHD治療薬(メチルフェニデート,アトモキセチン,グアンファシン)

ドーパミン


報酬系や運動調節に関与し,快楽や多幸感(また,それらに繋がる意欲)に影響を与えます。過剰になると過覚醒の状態となり,統合失調症等で見られる幻覚や興奮,不眠の症状が現れ,逆に不足すると意欲低下やうつ症状のほか,手足が動きにくくなったり,震えたりする症状が現れます。ドーパミンは統合失調症やうつ病の他,躁うつ病や依存症,ADHDにも関連すると言われています。

◎関連する向精神薬

SDA(リスペリドン,ロナセン,ルーラン,ラツーダなど)

MARTA(クエチアピン,オランザピン,シクレスト)

DSS(アリピプラゾール)

SDAM(ブレクスピプラゾール)

定型抗精神病薬(クロルプロマジン,ハロペリドール,スルピリド)

ADHD治療薬(メチルフェニデート)

GABA(γ-アミノ酪酸:ガンマ-アミノらくさん)


食品や飲料などで注目を集めているGABAですが,抗不安,催眠,鎮静など精神を安定させる神経伝達物質として知られています。GABAはグルタミン酸から生成されることで,興奮と抑制のバランスを保っていると言われています。

※ちなみに食事から摂取したGABAは直接脳へ作用しないと言われています。GABAは食事から摂取されるものとは別に脳内で生成されています。

◎関連する向精神薬

ベンゾジアゼピン系抗不安薬(クロチアゼパム,エチゾラム,ロラゼパム,アルプラゾラム,ブロマゼパム,ジアゼパム,ロフラゼプ酸エチルなど)

ベンゾジアゼピン系睡眠薬(トリアゾラム,ブロチゾラム,フルニトラゼパム,ニトラゼパム,クアゼパムなど)

非ベンゾジアゼピン系睡眠薬(ゾルピデム,エスゾピクロン)

精神刺激薬(モダフィニル)

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オレキシン


覚醒と睡眠を調節する神経伝達物質です。オレキシンが自身の受容体に作用することで覚醒(起きている状態)が維持できます。寝つく際にオレキシンが過剰に働いていると不眠を引き起こし,逆にオレキシンが働かなくなると,急に眠ってしまう,笑ったり驚いた時に身体の力が抜けてしまうといった症状が見られます。

◎関連する向精神薬

オレキシン受容体拮抗薬(スボレキサント,レンボレキサント)

ヒスタミン


花粉症にお困りの方は耳にしたことがあるのではないでしょうか。ヒスタミンが機能していると,花粉などの物質を取り込んだ際,くしゃみなどのアレルギー反応を引き起こしますが,集中力・睡眠など覚醒状態にも関わるとされています。花粉の薬を飲むと眠くなったり,ボーっとしたりした経験がある方はヒスタミンの働きが抑えられていたのかもしれません。

◎関連する向精神薬

その他の抗うつ薬(トラゾドン)

MARTA(クエチアピン,オランザピン,シクレスト)

精神刺激薬(モダフィニル)

アセチルコリン


眼圧,心拍数,血圧,消化液(唾液,胃酸)の分泌,排尿などに関わります。 また,認知や学習の元となる注意力,集中力,記憶のほか覚醒状態や思考などにも関わっていると言われています。ドーパミンとは拮抗作用にあり(お互いにその効果を打ち消し合うように働く作用),手足の震えや運動機能の障害などのドーパミンが抑制されている状態は,相対的にアセチルコリンが強く働いている状態となります。

◎関連する向精神薬

SSRI(エスシタロプラム,セルトラリン,パロキセチン,フルボキサミン)

SNRI(ベンラファキシン,デュロキセチン,ミルナシプラン)

三環系抗うつ薬(イミプラミン,アミトリプチリン)

四環系抗うつ薬(マプロチリン)

定型抗精神病薬(クロルプロマジン,ハロペリドール,レボメプロマジンなど)

ベンゾジアゼピン系抗不安薬(クロチアゼパム,エチゾラム,ロラゼパム,アルプラゾラム,ジアゼパムなど)

ベンゾジアゼピン系睡眠薬(トリアゾラム,ブロチゾラム,フルニトラゼパム,ニトラゼパム,クアゼパムなど)

非ベンゾジアゼピン系睡眠薬(ゾルピデム,エスゾピクロン)

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いかがでしょうか。

今回ご紹介したものは神経伝達物質のごくごく一部のみで,他にもたくさんの神経伝達物質が日々脳内を駆け巡っています。

また,これらの神経伝達物質は,脳内の神経回路で複雑に関連しあっており,単一的に説明ができるほど簡単なものではありません。

そのため,向精神薬の作用に関しても,個々の患者さんや症状によって異なる場合があります。

精神科医は患者さんの状態や症状を診察のなかで評価し,適切な向精神薬を選択して処方することで,神経伝達物質のバランスを調整し,症状の緩和や改善を目指しています。

自己判断での中断や増量は思わぬ離脱症状や副作用に見舞われる可能性があります。

病状や薬剤に対し,少しでも気になることがありましたらかかりつけの精神科医にご相談ください。

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