精神科医監修|SSRIの種類と共通点、違いを解説
SSRIの種類とそれぞれの共通点、違いについて解説します
軽症~中等症うつ病の第一選択薬として知られているSSRI(Selective Serotonin Reuptake Inhibitor(選択的セロトニン再取り込み阻害薬))。日本でも広く用いられている抗うつ薬の1種です。
セロトニンの欠乏が抑うつ状態を引き起こしているのではないかという仮説(モノアミン仮説*)に基づき誕生したお薬たちです。
(*モノアミン仮説では,セロトニン以外にもノルアドレナリン,ドーパミンなどの神経伝達物質が精神疾患に関連しているのではないかと考えられています。)
【関連項目】
【精神科医監修】抗うつ薬を解説【目的効果・種類・副作用とは?】
サポートメンタルヘルス公式LINE ID
メンタルヘルス情報を配信しています。友だち登録どうぞ!
各種SSRIの共通点とは?
SSRIの共通の特徴は,選択的で強力なセロトニンの再取り込み阻害機能を有する点です。通常,シナプスから放出されたセロトニンは,シナプス間の微小な隙間であるシナプス間隙を漂いながら隣のシナプスに到着します。しかし何らかの原因で隣のシナプスにセロトニンが到着しない場合,セロトニンは出発元のシナプスに戻ってしまいます。
この作用をセロトニン再取り込み作用と言います。配達先が不在のため,配達員さんが荷物を営業所に持ち帰るイメージですね。セロトニンが隣のシナプスに届かず回収されてしまうので,セロトニンの供給量はどんどん低下してしまいます。
そのため,SSRIを投入しセロトニンの再取り込みを阻害する(つまり営業所に持ち帰るのを邪魔する)ことによって,セロトニンが隣に届くよう促すわけです。
向精神薬は様々な箇所の神経伝達物質に作用しますが,他の神経伝達物質への作用に比してセロトニンへの阻害作用が強いものの総称をSSRIと呼ぶのです。
SSRIの種類とそれぞれの違いとは?
ある患者さんには効くものが,別の患者さんには効かないということは,特に精神科領域においてはよく起こりうる事象です。神経伝達物質や薬理作用には解明されていないことが多く,なぜ個別の違いが生じるのかに関してはこれからの研究に期待したいところですが,一方で,現時点で判明している神経伝達物質の働きや薬理作用も数多くあります。
もちろんSSRIも例外ではなく,日本で承認されている4種類のSSRIも,よくよく見てみるとそれぞれ違った特徴を有しています。SSRIそれぞれの持つ特徴をご紹介しましょう。
フルボキサミン(ルボックス®,デプロメール®)
日本で初めて承認されたSSRIです。世界的にもいち早くうつ病の治療に対し使われています。セロトニン再取り込み阻害作用のほか,二次的な特性としてσ1受容体結合作用を持ちます。このσ1受容体も謎が多いのですが,抗不安作用や抗精神病作用と関連があることが示唆されています。
日本においてはうつ病,うつ状態のほか,社会不安障害や強迫性障害にも適応を持ちます。アメリカではむしろ強迫性障害や不安障害に適応を持つ薬と考えられており,うつ病に対しての認可はおりていません。
低用量の調整がしやすい特徴を持っていますが,治療初期に悪心,下痢などの消化器症状が生じやすいお薬です。
様々な肝代謝酵素を阻害するため,他に併用する薬がある場合は注意が必要です。モノアミン酸化酵素(MAO)阻害剤を投与中あるいは投与中止後 2週間以内の患者さんや,ピモジド,チザニジン塩酸塩,ラメルテオン,メラトニンを投与中の患者さんは併用禁忌です。
かみ砕くと苦い薬です。
パロキセチン(パキシル®)
日本において最もパワフルなSSRIです。日本ではうつ病,うつ状態のほか,パニック障害,強迫性障害,社会不安障害,外傷後ストレス障害に適応があります。
薬理作用としてはセロトニン再取り込み阻害作用のほか,軽度の抗コリン作用,軽度のノルアドレナリントランスポーター(NAT)阻害作用,一酸化窒素シンターゼ(NOS)阻害作用を持ちます。抗コリン作用によって,焦燥感があり落ち着かない患者さんに対して静穏作用・鎮静作用が期待されます。
反面,後述するSSRI投薬中止時の離脱症状にプラスして抗コリン性のリバウンド(反跳現象)が生じるため,注意が必要です。離脱症状が強く,やめるのに苦労する場合もありますが,細かい容量のもの(5mg錠)やCR錠*など止めづらさへ対策された剤形もあります。
NAT阻害作用の特徴としてノルアドレナリンが増加し意欲回復にも向いている点が挙げられ,また,パロキセチンを高容量用いることで抗うつ作用の増強に関与していると考えられています。NOS阻害作用も有しており,これは特に男性の性機能障害の一因となります。
(*CR錠(徐放性製剤)とは…普通剤に比べ体内でゆるやかに吸収され、血中濃度の変化が比較的小さい特徴をもつ。CR錠は投与初期の副作用発現の軽減などが期待できる。)
セルトラリン(ジェイゾロフト®)
効果も副作用も共にマイルドなSSRIです。うつ病の軽症例に向くとされており,日本ではうつ病,うつ状態のほか,パニック障害,外傷後ストレス障害への適応を持ちます。
セロトニン再取り込み阻害作用のほか,σ1受容体結合作用,軽度のドーパミントランスポーター(DAT)阻害作用を持ちます。先にも登場したσ1受容体ですが,フルボキサミンほどの効力は有していないものの,抗不安作用や抗精神病作用に寄与している可能性があります。
DAT阻害作用の方も,抗うつ作用としてどの程度のDAT阻害作用が必要なのか?という疑問点や,そもそも必要なのか?という議論でさえ結論づいていないのが正直なところです。もしDAT阻害作用が臨床的に有用なのであれば,気力,意欲,集中力の改善などに期待が持てます。
CYP2D6という肝代謝酵素を阻害しますが,同じく阻害するパロキセチンほど阻害作用は強くなく,薬物の相互作用は比較的少ないです。
OD錠*があり、嚥下機能の低下した患者さんも服薬しやすいです。
プロラクチンへの影響が少ないので、少女・青年女性に対して好ましいお薬です。
(*OD錠(口腔内崩壊錠)とは…ラムネのように,少量の水や唾液ですぐに溶けて服用できる剤型のこと。)
エスシタロプラム(レクサプロ®)
もっとも典型的なSSRIです。その理由はセロトニンへの選択性の高さにあります。
他のSSRIはセロトニン以外の受容体にも作用をするため,厳密にいえば「SSRIと言っても他の受容体と比べてセロトニンへの選択性が高い」という注釈が必要なのですが,エスシタロプラムはその薬理作用の大部分をセロトニン再取り込み阻害作用で説明できるため,他のトランスポーターや受容体にほとんど作用を示しません。
その点で「典型的なSSRI」「最もピュアなSSRI」と称されることもあります。アロステリック作用により他のSSRIより効果は長く,また,初期容量から効果が発現しやすく使いやすいのが特徴です。
適応はうつ病やうつ状態の他,社会不安障害があります。
代表的な副作用にQT延長があるため,心疾患患者さんへの投与は控えることになっています。QT延長の発生頻度についてはレクサプロ®の添付文書によると頻度不明となっていますが,日本人を対象とした研究(Asakura et al.,2016)では,サンプル数(158例)は少ないものの,ベースラインから30msを超えた患者は10例、60msを超えた患者は1例であったとの報告もあります。
(ちなみに60msを超えた方は調査最終週の52週目で68msを記録、QTcFは469msでした)。
また同研究で,QTcF間隔が500msを超えた(いわゆる重篤な)方はいませんでした。
SSRIを途中でやめるとどうなる?
薬物などの反復使用を中止することで病的な症状が出現することがあります。
この症状のことを離脱症状と呼びます。
SSRIの服用を中止あるいは中断した場合に起こる離脱症状としては,めまい,頭痛,発汗,吐き気,不眠,感覚異常,性機能障害などのほか,シャンビリ感と呼ばれる金属音のような「シャンシャン」という耳鳴りと元気が流れるような「ビリビリ」としたしびれる感覚などが挙げられます。
自己判断での服薬中断は思わぬ症状を引き起こしますので,減薬の際には医師と相談することを強くお勧めします。
関連項目:精神科医監修|抗うつ薬の離脱症状
参考資料
Asakura, S., Hayano, T., Hagino, A. & Koyama, Y. (2016). Long-term administration of escitalopram in patients with social anxiety disorder in Japan. Neuropsychiatric Disease and Treatment, 12 ; 1817-1825.
Cipriani, A., Furukawa, T. A., Salanti, G., Chaimani, A., Atkinson, L. Z., Ogawa, Y., Leucht, S., Ruhe, H. G., Turner, E. H., Higgins, J. P. T., Egger, M., Takeshima, N., Hayasaka, Y., Imai, H., Shinohara, K., Tajika, A., Ioannidis, J. P. A., &Geddes, J. R. (2018). Comparative efficacy and acceptability of 21 antidepressant drugs for the acute treatment of adults with major depressive disorder : a systematic review and network meta-analysis. Lancet, 391 ; 1357-1366.
桑原秀則・阪岡倫行 (2024). 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI) 薬局,75(1),74-79.
Stahl, S. M. (2021). Stahl’s Essential Psychopharmacology: Neuroscientific Basis and Practical Applications (5th ed.). Cambridge University Press.
(ストール,S. M. 仙波純一 ・ 松浦雅人 ・ 太田克也(監訳)(2023). ストール精神薬理学エセンシャルズ: 精神科学的基礎と応用(第5版) メディカル・サイエンス・インターナショナル)
【監修】
本山 真(精神科医師 医療法人ラック理事長)





