アタッチメント理論:子どもの情緒的結びつきと発達への影響
子どもの情緒的結びつき【アタッチメント】と発達への影響を解説
アタッチメントとは、子どもが特定の養育者と築く情緒的な結びつきを指します。子どもが不安や恐怖を感じたときに養育者にシグナルを送り、適切な反応を受けることで安心感を得る本能的な行動です。
アタッチメントパターンは安定型と不安定型に大別され、不安定型はさらに回避型、アンビバレント型、無秩序・無方向型の3つに分類されます。安定型は養育者が適切に反応し、子どもが安心感を得ることができるパターンです。不安定型は子どもが安心感を得るために適応した行動パターンであり、タイプごとに異なる特徴があります。
アタッチメントの質は子どもの発達に大きな影響を与え、安定したアタッチメントは情緒の安定や対人関係の能力向上に寄与します。不安定なアタッチメントは対人関係や情緒の問題リスクを高めるため、アタッチメント理論は発達心理学や児童教育の分野で重要視されています。
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アタッチメントとは?
発達心理学や児童・教育領域において用いられる考えの1つにアタッチメントという言葉があります。
「アタッチメント(attachment:愛着)」とは,人が特定の他者(多くは親等の養育者)との間に築く緊密な情緒的結びつきを指す概念であり,子どもが養育者に対して形成する絆のことを指しています。この言葉を中心とした理論のことをアタッチメント理論や愛着理論と呼びます。
「結びつき」や「絆」と言われてもあまりピンと来ないかもしれないですね。
泣いている我が子に反応し子供を抱く養育者をイメージしていただけると分かりやすいかもしれません。キーワードは「安心感」です。
アタッチメント行動と養育者の役割
子ども(特に乳児期や幼児期)は自身が空腹時や,暗い場所,養育者が近くにいない等の危険な状態や環境にあるとき,その不安や恐れを養育者に知らせるために泣いたり養育者に近づいたりといった行動で養育者にシグナルを送ります。
このシグナルをアタッチメント行動と呼びますが,それに気づいた養育者は子どものそばに寄って抱き上げたり,言葉をかけてあやしたり,危険な場所ならそこから子どもを連れて離れたりといった養育行動をとって,子どもを落ち着けます。
こういった養育行動によって子どもの抱いていた不安や恐れは鎮静化され子どもは安心感を抱きます。
安全基地としての養育者
つまりアタッチメントとは,人が不安・恐怖などを感じた時に特定の他者に「くっつく(attach)」ことで安心感を得る本能的な欲求や行動のことを指しています。
スキンシップとは異なり,不安がる子どもが養育者にくっつくことで安心感に浸れる=養育者が子どもにとって「この人といれば大丈夫」と感じられる安全基地として機能している,というあたりがポイントとなります。
ちなみに,くっつくことができれば誰でも良いというわけではありません。乳児は生後6ヵ月を過ぎた頃から特定の他者をアタッチメント対象として選択します。かみ砕いて言えば,よくお世話をしてくれる人を覚え始める,という言い方になりましょうか。
アタッチメントパターンの分類
1歳を迎える頃になるとアタッチメント対象との結びつきは緊密なものとなり,アタッチメント対象に向けられたアタッチメント行動が明確に観察されるようになります。
そして,この時期のアタッチメント行動は大きく安定型と不安定型のアタッチメントパターンに大別することができ,さらに不安定型のアタッチメントパターンは3つのパターンに分類することができます。
安定型
安定型のアタッチメントを形成できている場合,子どもは自身のアタッチメント行動に対して養育者が適切に反応し応答してくれるということを経験的に知っている状態となります。不安や心的苦痛はくっつくことで慰められ安心感に変わるという確信があり,その関係性に信頼と自信を持ちます。苦痛を感じて表現することにも,それを慰めてもらって安心することにも,ためらいがありません。何かあれば養育者とくっついて安心感を得られるため,外の世界にチャレンジ(探索)することにも積極的です。
さて,ここから不安定型の解説です。
本来的な安心感が得られないアタッチメント対象との関係性のなかで,子どもの側で工夫してなんとか安心感を得よう,なんとかアタッチメント対象から保護はしてもらおう(くっついておこう)と適応したアタッチメントパターンとなります。回避型,アンビバレント型,無秩序・無方向型の3つに分類されます。
回避型
子どものシグナルに拒否的なアタッチメント対象,支配的なアタッチメント対象等に適応したアタッチメントパターンです。拒否的とは無視するなどの拒絶の意味だけではなく,泣いたりしている子どもの注意を別のものに向けさせるような振る舞いも指しています。
心的苦痛を表現することはアタッチメント対象に歓迎されないのだと学習し,子どもは心的苦痛を感じてもシグナルを発さなくなるという形で適応します。心的苦痛を「感じていないこと」にして感情を抑え,つまり,不安はあるけど無いことにして,安心感を維持しようとしています。不安を呼び起こすような状況において,傍から見ると無関心で反応していないように見えますが,生理的指標レベルでは不安を感じていることが観察されます。
アンビバレント型(両価型)
子どもへの養育態度に一貫性がなく気まぐれなアタッチメント対象,子どもの期待とちぐはぐな応答をするアタッチメント対象等に適応したアタッチメントパターンです。ある時は感情的に接し別の時は無関心であるような,波のある養育態度や,シグナルに合わせずルーティン的に抱くというような養育態度を指しています。
危険のサインに敏感で,シグナルをアタッチメント対象に送るものの,アタッチメント対象は適切な応答をしないため,過剰にシグナルを送り続けて養育行動を維持させ安心感を得ようとします。あやしたりしても不安はなかなか鎮静しません。一方で,アタッチメント対象が抱こうとすると怒って抵抗するなど,相反する行動が見られます。
無秩序・無方向型
不安定型のパターンの1つですが,回避型,アンビバレント型のように独立しているわけではなく,むしろそれらの延長線上にあると考えられています。というのも,回避型とアンビバレント型の2つの不安定型は,一方はくっつくことから回避することで安心感を得て,もう一方は過剰に感情表出することで安心感を得ています。しかし,そうした方法をもってしても安心感を得られないときに無秩序・無方向型の行動が出現します。
アタッチメント対象の物質依存,貧困など高リスク要因が重複した家庭や,アタッチメント対象からの虐待やネグレクト等の不適切な養育を受けている子どもに観察されやすいパターンだとされます。この状況における子どものアタッチメント対象は,安心感を得られる対象ではなく,恐怖の源泉として体験されます。そのため,近づいたかと思えば後ずさりする,アタッチメント対象が姿を現すと凍り付いたかのように固まる,放心したかのような状態になる,といった「くっつくこととくっつかないことの間で混乱している」かのような行動を見せます。
アタッチメントパターンの変動性
ただ,これらのアタッチメントパターンは分類こそされているものの,○○さんは安定型,△△さんは回避型と,まるで血液型のように振り分けられるものではありません。
むしろ,誰しもがそれぞれのパターンを使っていて,主に使うアタッチメントパターン,ストレスなど負荷がかかった際に使いやすいアタッチメントパターンの傾向が人によって異なる。くらいに捉えていた方がより現実に即していると言えるでしょう。
また,よく使うアタッチメントパターンに関しても時間的安定性,つまり,そのアタッチメントパターンのままでいる割合は100%ではなく変化する可能性があります。
しかしながら,アタッチメントの質は、子どもの発達に大きな影響を与えます。安定したアタッチメントを持つ子どもは、情緒的に安定し、対人関係をうまく築く能力が高まります。一方、不安定なアタッチメントは、対人関係や情緒の問題を高めるリスクがあります。
そういった点からも,アタッチメントは発達心理学や児童・教育など子どもとの関わりが深い領域において重視される概念なのです。
【監修】
本山 真(精神科医師 医療法人ラック理事長)





