新型コロナウイルス感染対策の情報提供 vol.1
当院にかかってくださっている患者様へ
当院はメンタルクリニック、つまり精神科の領域を扱う医療機関ではありますが、いまや社会的、いや全世界的な問題となった新型コロナウイルス感染症についての情報提供を行い、当院にかかってくださっているお一人おひとりが、より正しい自己防衛ができるよう、お手伝いをさせていただきたいと考えております。その一助となることを願い、この文書を作成いたしました。
＜新型コロナウイルスの特徴＞
・コロナウイルスは、いわゆる「風邪」の原因となるウイルスのうち15%を占めている、非常になじみのあるウイルスです。今回、人類がこれまで感染したことのない型のコロナウイルスが出現し、「新型コロナウイルス」と呼ばれるようになりました。人類はこのウイルスへの免疫を持ちません、つまり、容易に感染します。
・感染した人のうち80%は軽症。特別な治療もいらず、自然治癒します。
・肺炎などの治療が必要な状態になるのが15%、集中治療を要する命にかかわる状態になるのが5%。重症化する人には「高齢者と基礎疾患のある人」が多く含まれます。60歳以下の健康な人が重症化する確率は低いと言われています。
・感染者のうち80%は誰にも感染させず個人のなかで終息しています。
・感染が広がっている原因のひとつは「クラスター」です。クラスターとは、感染した人がつながった集団のことを言います。クラスターが連鎖することで感染は拡大します。
・次の３つの要因が重なったときにクラスターは発生しやすいといわれます。それは「換気の悪い密閉空間」「多くの人が密集(手の届く距離)」「会話や発声がある」です。
＜個人で持続可能な対策を＞
手洗いなどの個人的な予防策は継続してください。手で触れただけで感染するわけではありません。その手で、口・鼻・眼を触れるから感染するのです。多くの人が触れる環境、帰宅後、マスクをはずす時、食事前などは最低限のタイミング。マスクをつけている人は、それを取った時に顔に触れるので、はずす時の手洗いを忘れないようにしてください。また、花粉症の人も、目や鼻に触れやすいので、花粉症の治療をしっかりと行うことも効果的でしょう。人によって日常的な行動パターンは異なります。自分ができることを、ぜひ再確認してみてください。
そして、免疫力を高める工夫も大切です。栄養、睡眠は免疫力の維持に大切です。そして笑いが免疫力アップに効果があることも証明されています。今、ご自身が当たり前にしていることにも感謝を向けてゆきましょう。なかなか前向きな気持ちになるのは難しいかもしれません。もちろん、無理なことを求めるつもりはありません。そういう気持ちになれないことも、ありますから。そして、今の不幸が強ければ、感謝を感じることは難しいかもしれません。もちろんそれでもかまいません。今の自分で、無理なくできることでいいので、自分自身の気持ちが楽になることを、ご自身にして差し上げてください。そしてもし、もしも少し余裕があれば、周囲にいる人、お一人でもいいので、明るい心をシェアできますように。その気持ちと行為が、あなたご自身をさらに元気にしてくれると思います。
＜クラスターが起こる場所を避ける＞
もしも感染しても、多くの人は重症化せずに治っていきます。しかし、高齢者や基礎疾患のある人は重症化率が高いことから、このような人たちにクラスターの連鎖を起こさない努力を続けることが求められます。人と人の距離はどうか、声をだすことが多いか、空間の大きさはどうか、換気は可能か、そのようなことを考えながら日常生活を送ることが必要です。
先に挙げた条件がそろうほどクラスター発生のリスクは高まります。大きな野外の会場は、人が集まっていても、換気の面でリスクが低くなります。満員の電車では、人が話すことなく、ドアが頻回に開閉して換気されるならば、そのリスクは低下してきます。このように、今後は３つの条件を考えながら、段階的に対策を立てていくことになるでしょう。
多くの人が、不要不急の外出を控えるほど、この感染症を抑える可能性が高まります。しかし、このような対策を継続するためには、経済的なサポートも含めてバランスを考えていくことも必要です。個人による努力の積み重ねは、今後の日本がどうなるかというギリギリのところで、きっと希望へとつながっていくはずです。
先行きの見えない状況では、過度な不安や、不満が募ります。一方で情報が不足していれば、鈍感な対応で周囲に混乱をまき散らしかねません。日本に生きる一人ひとりが、鈍感を超え、不安や不満に飲み込まれず、手を携えて未来を創ってゆけますように。みなさん、頑張りましょう。
綾瀬メンタルクリニック 院長 中村光
